【路地】かつて永井荷風が通った、元花街の玉の井。角を曲がるとサボテンが路地をふさいだ。
■カメラ:ライカM6 レンズ:ズミルックス35mm 絞り:f4
シャッタースピード:1/125 フィルム:プロビア100F 撮影地:東京都向島

【路地】温泉街を散歩していると“総天然色”という言葉が似合う射的場があった。
■カメラ:ライカM6 レンズ:ズミルックス35mm 絞り:f4 シャッタースピード:1/60 フィルム:プロビア100F 撮影地:群馬県水上

【小屋の肖像】防波堤と一体化するように、漁師小屋が砦のように建っていた。
■カメラ:ライカM6 レンズ:ズミルックス35mm 絞り:f11 シャッタースピード:1/125 フィルム:プロビア100F 撮影地:青森県平舘

25歳の時に市民講座で写真教室を受講。
近所を撮影することがその課題でした。


 25歳の時に偶然目にした市民講座のお知らせ。その時の講座内容は”写真“以外に
”詩“などもあったそうです。しかし、たまたま家の棚にディスプレイのように置かれていたカメラがあったので、そのカメラを活躍させてあげたいと思い”写真“を受講。
 「最初の課題が『近所の気になるところを撮る』というものでした。住んでいた街の光景を思い浮かべると、路地裏や職人さんのいる風景などがあり、手探りで撮影を始めました。そして注意深く観察してみると、新鮮な驚きがたくさんあったのです」。
 そう語る中里さん。ご自身が初めて意識して撮った写真を講師の先生に褒めてもらったことで、写真の面白さに気づき、写真関係の仕事にたずさわりたいと思いはじめ、1年ほど写真雑誌の編集をしていたそうです。
 「でも、人が撮った写真を毎日見ているうちに、もっと自分でも写真を撮りたくなってしまいました。もちろん休みの日には必ず写真を撮りに出かけていました」。
 そのうちに、もっともっと写真が撮りたくなり、フリーのカメラマンになることを考えはじめたそうです。けれども、どのようにすれば写真を仕事にできるかがわからなかった中里さんは、知り合った出版社の方に自分の撮ってきた写真を見てもらいました。残念ながらそれまでに撮った作品は、その出版社とは傾向が違っていたので出版にはいたりませんでしたが、撮影の仕事を依頼されることに。こうしてフリーの写真家として生活していくことになったのが28歳の時でした。
 中里さんは住んでいた千葉県の市川市をはじめ、東京湾の埋立地を積極的に撮影しました。やがて、それはモノクロで構成された最初の写真集『湾岸原野』になりました。

日常生活の景色の中に、心を揺さぶる何かがあるはず。
それを見つけて写真に表現することが面白い。


 「いつも暮らしなれている街や旅先での生活の中に、私の心を揺さぶる何かがあるはずです。でも、それはあまりにも日常的なために、目にしたものを新鮮な気持ちで感じることができなくなってしまっています。しかし、その中に新しさを発見することができないか。それは写真を始める前からいつも思っていました」。
 大学時代に同人誌で文章を書いていた中里さんは、その頃から『日常という薄皮を1枚はがすことで、今まで見えていた景色とは違って見える何かを見つける喜び』に、面白さを見出したとおっしゃいます。
 「その糸口をつかむために写真を撮る作業は、とても面白く自分に向いていると思いました。写真でどのようにアプローチしたら自分の中で固定された景色が溶け出すのか。その意識で街や景色を見た時に、何かに触発されて静かな火花が散る瞬間があるんです。それが新しいイメージが現れたときで、写真の面白さだと思っています」。
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