気象条件の厳しい大雪山にチャレンジ。日本の自然風景には、まだまだ新しい発見が潜んでいる。
 
―先生は、今後も日本の自然風景を撮り続けていかれるのですか?


 ニュージーランド、オーストラリア、ヨーロッパ各地、時には台湾の山岳地帯などにも行って撮影をしてきました。さらにアラスカやアマゾンの大自然を撮影することも考えましたが、海外でいい写真を撮ってきても、日本人の感性に訴えられるとは限りません。そこで日本で撮ったもので勝負した方がいいと考えました。
 やはり日本の自然風景を撮ることが、どの国の自然を撮るよりも難しいと私は思います。オーバーのように思われるかもしれませんが、「日本の風景を制する者、世界の風景を制する」と言っても過言ではないと思います。それくらい日本の自然は撮影のしがいがあると思います。


【残りもみじ】
■カメラ:マミヤ645AFD 
レンズ:ズームAF 55〜110mm F4.5 絞り:f16 シャッタースピード:1/2秒 フィルム:RVP100 撮影地:福島県只見町(11月)

――それは日本の自然風景の中に、まだまだ新しい発見が潜んでいるということなのでしょうか?


【霧氷林】
■カメラ:マミヤ645AFD 
レンズ:ズームAF 55〜110mm 
F4.5 絞り:f16 
シャッタースピード:1/15秒 
フィルム:RVP100 
撮影地:長野県上高地(2月)

 その通りです。ある程度のところまで車で行ってカメラを構える。そのような場所や方法で撮影された写真というのは、出尽くした感があります。
 私は今まで比較的標高の低いところで撮影をしてきました。雨飾山も標高2千メートルに満たない山です。そこで、日本の中でどこだったら新しい写真が撮れるのかということを数ヶ月かけて考えた末、標高の高い山に思いを巡らせました。
 そのような山には簡単には行けないでしょうから、行けばきっと、低地では想像もつかないような醍醐味のある写真が撮れるのではないかと考えました。具体的な撮影地として、北海道大雪山を選びました。

――数ある山の中で、大雪山を選ばれた特別な理由は何かあるのでしょうか?

 実は、大学に入った頃から大雪山系は気にはなっていたのです。下宿の部屋の壁には大雪山の地元・旭川山岳会が監修した1/25000の大きな地図を貼って、いつもながめていました。
 きっと、そのようなことが心のどこかにあって、大雪山を選んだのだと思います。でも、最大の理由は、日本でありながら、日本離れした広大な風景が展開されている北海道の山岳地帯を巡りながらも、従来の「山岳写真」と言われている範疇から脱却して、「山麓写真」の視点で新しい「山岳写真」を表現したいと思っていた点です。こうしたこともあり、今年の5月から大雪山の撮影に取り組んでいるのです。
 


――すでに何回も行かれているのですか?


 この夏シーズンには、百日ほど山に入っておりました。一度山に入るとテントを張って3〜4日は泊り込みます。しかも、大雪山というところは本州の山々と比べアプローチが長く、撮影地に着くまで歩いて10時間前後かかることもあるのです。やはりこれは、体力のある内にやっておくべきだという理由もありました。

――山に入られる時は先生お一人で行かれるのですか?

 私とポーターの二人で行きます。できるだけ荷物は少なくしたいのですが、そうもいかず、カメラボディを4台とレンズ10本ほど持って行きますので、総重量が約80kgにもなるんです。


【ゆく秋】
■カメラ:マミヤRB6×7 レンズ:KL250mm F4.5 APO/L 絞り:f22 シャッタースピード:1/4秒 
フィルム:RVP100 PLフィルター使用 撮影地:北海道三国峠(10月)
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