犬や猫のほとんどは海外原産。
なるべく産地に行って本来の姿を見るようにしています。
増田先生の掛け声の下、次々にポジションについてくる犬たち。一度にこれだけの犬種を集めて撮影することは大変なことです。

───増田先生と言えば動物写真で有名ですが、海外での撮影も行なわれているのですか?

 海外には何度も出かけていますが、それは観光が目的ではなく、あくまでも動物の撮影が目的の旅行です。ですからどんなに美しい風景に出会っても目には入らないんです。
 先日も盲導犬の取材でアイルランドに行ってきました。ビールがおいしかったという記憶はありますが(笑)、どのような街だったかと聞かれると、実はあまり覚えていません。
 海外に出かける目的のひとつはドッグショーを見ることなんです。いま日本にいるほとんどの犬は海外が原産地です。犬種の名前をみてもカタカナの名前が圧倒的です。そして現在、日本国内にいる犬たちにとって日本の環境が適しているのかどうか疑問があります。特に数の少ない種類の場合は飼い主も知識不足であることが多く、太らせてしまったりと本来の体型とは異なる姿の犬も見られます。だから原産国に行って、自分の目で直接確かめてくるのです。
 全犬種の約60%近くは原産国がイギリスなんです。残りの20〜30%がフランスやドイツなどで、ヨーロッパエリアに集中しています。
 日本で人気のゴールデンレトリバーを10年程前にイギリスでよく見かけましたが、毛の色が真っ白で、最初は犬種が分からなかったくらいです。このことは、イギリスでは犬種本来の姿かたちを守り続ける傾向があるためだと思われます。
 また、これと対照的なのがアメリカです。アメリカでは、犬種本来の姿かたちよりも、ドッグショーでの見え方や狩りにおける能力を高めるためなど、目的に合うような交配がおこなわれてきました。
 さらに、スイスが原産国のセントバーナードも日本にいるものは毛が長いのですが、現地で救助犬として活躍しているものは短毛です。同じ犬種でも日本に現在いるものと、原産国のヨーロッパにいるもの、またアメリカにいるものでは姿や形がそれぞれ違うことがあります。ただし、これらのことはどちらが優れているかということではありません。
 このようなことからも、現在日本にいるものが本来の姿なのかそうではないのかという判断をするため、自分の目で確かめたくて海外に出かけているのです。
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