カメラのキタムラ
Vol.46 2003 AUTUMN
特集 写真家 増田勝正氏  
デジタルカメラで撮影
【朝の輝き】夜が明けていく。朝霧が静かに湖面を覆っていた。山頂からの太陽が湖面を輝かす頃になって、水鳥たちの動きも活発になっていく。野鳥の楽園、新潟県豊栄市の福島潟の朝風景。
■カメラ:キヤノンEOS-1Ds レンズ:EF28-70mm F2.8 シャッタースピード:1/60 AE デジタル PLフィルター・三脚使用 撮影地:新潟県福島潟
【霜の朝】はらはらと舞い降りた紅葉も、次第に色褪せて灰色になって、土に戻っていく。この朝は、枯れて朽ちていく葉も少しばかりの霜化粧。
■カメラ:ミノルタα-7 レンズ:ミノルタマクロ200mm F3.5G シャッタースピード:1/2 AE フィルム:RVP PLフィルター ・三脚使用 撮影地:石川県尾口町
フィルムから得られる表現力はとても大きい。そのことをきちっと認識した上でデジタルカメラに取り組んで欲しい。

―――竹内先生もデジタルカメラで撮影した作品を発表されていますが、先生がお感じになっている、デジタル写真と銀塩写真の違いとはどのようなことでしょうか?


  ひとことで言えば、デジタル写真というのは、今までのフィルムを使った写真とは異なる、新しい映像表現手法だと考えています。
 フィルムにはフィルムにしか表現できないものがあり、デジタルにはデジタルのよさがあります。ですから、それぞれを比較するのではなく、そこのところをよく理解して使っていくことが大事だと思います。
 写真が発明されて約160年、フィルムは長い年月を経て、その性能は今、頂点を迎えていると思います。ですから、デジタル写真とフィルム写真を、まったく同じ土俵にのせて勝負させる必要はないと考えています。
 それと、デジタル写真で気をつけてもらいたいのは、パソコンを使って画像を後から加工することができるからといって、撮影するときに安易にシャッターを切らないで欲しいということ。また、せっかくの作品に合成などの加工をするのは、写真が持っている本来の力を自ら捨て去ることになります。さらに、デジタルの場合は画像データの保存には注意していただきたいですね。せっかく苦労して撮ったものが、紛失したり消去されてしまったりすると、取り返しがつきません。
 私の場合は、デジタルカメラで撮影するときでも、念のため必ずフィルムでの撮影もしています。
【朝霧漂う】ダム湖の朝。川面から湧きだした水蒸気が次第に上昇して、山腹を覆っていた。霧がでると、一気に風景が幻想的な雰囲気に様変わりしてくれる。
■カメラ:ミノルタα-9 レンズ:ハイスピードアポテレズーム80-200mm F2.8G シャッタースピード:1/10 AE フィルム:RVP PLフィルター ・三脚使用 撮影地:新潟県湯之谷村
これからは、被写体やテーマに よってデジタルとフィルムを使い分けて撮影。そして、デジタルカメラで新たな表現の可能性を集積していくことが大きな課題です。

―――先生ご自身の中で、デジタルと銀塩を使い分けていく基準は具体的に確立されているのでしょうか?
 まだ、はっきりとはしていません。ただ一般の方が記念写真やスナップなどを撮影するのには、これからはほとんどデジタルカメラになっていくと思います。現在のコンパクトタイプのデジタルカメラは、かなり高性能です。プリントする場合でも、普通の写真であれば、十分対応できる画像だと思います。
 それと、デジタルカメラで面白いと思うのはモノクロ表現です。最近のモノクロ用フィルムや印画紙に含まれている銀の量が、以前に比べると少なくなっているので、表現できる階調の幅が狭くなっています。
 その点デジタルカメラで撮影して、モノクロプリントしたものは、かなり豊かな階調が得られます。モノクロ表現だけが目的であれば、デジタルカメラが合っていると思います。

―――先生ご自身が今後、デジタルカメラで撮影してみたいものはおありでしょうか?
 私は以前から『日本人の原風景』をテーマに撮影活動を行なってきたのですが、実は今、アイスランドの風景をデジタルカメラで撮影して、そのテーマを表現してみようと思っています。

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