カメラのキタムラ
Vol.45 2003 SUMMER
フォトワールド 十人十色 第6回  
写真と詩の組み合わせは心が癒される表現手法
フォト・エッセイスト 加藤芳明
初夏から真夏にかけて、暗闇の水辺でほのかに放たれる輝き。美しくもはかないホタルの光。
環境の変化に対してデリケートな生き物だけに、年々その姿を見ることは難しくなってきています。
そのホタルの輝きに限らず、あらゆる自然を愛し、自然から得られる魅力を写真とエッセイで伝え、表現している一人の作家がいます。フォト・エッセイストの加藤芳明先生をご紹介いたします。
【ホタル幻想】
「ホタルの夢」

月の光に照らされて
夢のホタルが目を覚ます。
古里恋うる葉隠れに
尽きせぬ想い 語り出す・・・・・・。

”ほう ほう 蛍 来い、
   小さな提灯 提げて来い。“

七色淡い紫陽花に
幼い日々を思い出す。

夏の初めの水辺りに 遊んだ仲間の笑い声
冒険の夢追いかけて 銀のお船で漕ぎ出した
少年の日もあったっけ

深い 深い 水底に
沈めた夢が浮かびきて
静かな夜に 灯をともす。

”ほう ほう 蛍 来い、
   小さな提灯 提げて来い。“

ほう ほう 蛍の見る夢は
月の光に青白く 消えては結ぶ泡沫の
遠い昔の物語・・・・・・。

加藤芳明作品集『ホタルの夢』より
【埋(うず)み火】
入院をきっかけに再開した写真活動。そして、あらためて発見した写真の持っている力。
 カメラには子供の頃から親しんでいた加藤先生が、本格的に写真を撮りはじめたのは大学に入ってからのことでした。
 しかし、卒業後は教師の道に進まれた忙しさもあって、しばらくカメラから遠ざかっていました。やがて体調を崩され、入院生活を送ることとなり、その時に再びカメラを手にすることになりました。
 「ともすれば暗く沈みがちな気分になる病院の中を少しでも明るくしようと、病院の近くで草花や小鳥などを撮影しました」。そのことが、先生を再び写真の世界へと呼び戻すことになりました。早速、撮影した写真を廊下に展示してみると、その写真のことが話題となり、特に入院されている患者さんからは好評を博しました。
 ある時、入院されている年配の女性患者さんから、「夜中にね、トイレに行った帰りに、小鳥やお花の写真と会話をして気持ちが落ち着いたら自分のベッドに戻るんですよ」と言われ、先生は今まで気がつかなかった、写真の持っている力を再発見したのです。

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