新・メーカー探訪


現代銘品カメラ列伝4
ペンタックス645N編
高画質と簡単操作を両立させた
世界初のAF中判一眼レフ。


ペンタックス645N(1997年発売)
レンズ交換式の中判一眼レフでは世界初のAF化を実現した6×4.5判カメラ。35mm感覚の機動性と操作性を誇ったペンタックス645をベースに、ペンタックス独自の高精度AFシステムSAFOXIVをはじめとした数々の最新機能を搭載。
「スーパーフィールドカメラ」のキャッチフレーズのもと、屋外での撮影に適した中判カメラとして、1984年に発売されたペンタックス645。それ以来14年間にわたるロングセラーを続けたこの機種の後継機として、ペンタックス645Nが昨年発売されました。
今回は、ペンタックス伝統の小型軽量ボディを継承した、世界初のAF中判一眼レフカメラとして注目されている、ペンタックス645Nの開発についてお話を伺いました。

「スーパーフィールドカメラ」を継承しつつ、
新たにAFを搭載。

 ペンタックス645が発売された当時、6×4.5判の一眼レフにおいて、機動性を重視するという発想はあまりなかったといっていい。そうした中でペンタックスは、35mm一眼レフ感覚で使える「スーパーフィールドカメラ」という独自のコンセプトにより、645を開発した。そして645のもつ機動性・操作性といった基本性能や、中判カメラとしての高画質を継承するとともに、最新技術による新機能を取り入れて昨年登場したのがペンタックス645Nである。

旭光学工業(株)カメラ開発企画室主務
石井弦一郎氏
 「具体的には簡単操作、つまり解りやすさが開発テーマですね。その代表的なものがAFシステムの搭載です。35mm一眼レフではもうAFがあたり前の時代ですから、そういったカメラを使用している方々に中判も使っていただくには、AF化は当然の流れといえるでしょう。

 また、従来のペンタックス645を使っていただいている方にもスムースに移行していただけるように、操作性の継承やシステムの互換性にもこだわりました」と旭光学工業(株)カメラ開発企画室主務の石井弦一郎氏はこのカメラの狙いについて述べる。

旭光学工業(株)第二開発設計部室長
小林匠氏

 645Nが誇るこのAFシステムについて、第二開発設計部の小林匠室長は「MZ-5など35mmカメラで培った当社独自のAFですが、ピントの検出範囲の広い高感度のセンサーを採用しており、より精度の高いフォーカシングができるのが特徴です」と説明する。

 「AF機構をボディ側に入れるか、レンズに内蔵するかでかなり論議し、結局ボディ側に入れることになったのですが、今度はそのスペースの確保に苦労しました。AFを搭載したために、重く大きくなってしまうのでは、本来の狙いである機動性に欠けてしまいますから」と開発にまつわるエピソードもお聞かせいただけた。

 このAFシステムは3点のセンサーで広い範囲に合焦する「3点AF」と、1点にピントを合わせる「スポットAF」とが撮りたい構図や被写体によって使い分けられる。さらに被写体にピントが合った時点でフォーカシングが停止するシングルと、動態予測で絶えず被写体を追って合焦し続けるサーボとがあり、撮影意図に合わせたモードが選べる。また、MF撮影をしたい時は、レンズ側でワンタッチ切り替えができるのも便利な特徴だ。

 そのほか、2種類のセンサーで精度の高い測光を可能にした新開発の測光システムや、露出などをフィルムに記録できる「撮影データ写し込み」なども645Nならではの機能。さらに中判カメラは高齢者のユーザーが多いということで、645Nにおいてはファインダー内表示を大きく見やすくしたり、昔のタイプのカメラと同じように、直感的に解りやすいダイヤル式の操作系にしているといった配慮も見られる。

6×4.5判と35mmのフィルムサイズの差が、写真の諧調や粒状性、ディテールの再現性の違いを生み出している。
左:35mm判/実画面寸法24×36mm
右:6×4.5判/実画面寸法56×41.5mm
なお、645Nで撮影した下のフィルムには、「撮影データ写し込み機能」により、露出やレンズ焦点距離などのデータが自動記録されている。