日常風景ウォッチング

 その後ラジオ番組で、私が友人を呼んでトークをするという企画があったんですが、その時にまだ1回しか会ったことのない藤森さんに来てもらったんです。そこですっかり意気投合してしまい、30分の収録のところ2時間位しゃべってしまいました。その時に私の中で、「路上観察学」というものの論理的解明がなされたんです。これは考察に値する立派な学問、つまり考現学なんだなと。それまでは、何となく路上の面白い物件に興味を抱いていたんだけど、しっかりした分析力をもった藤森さんの話によって、その本質がはっきりと見えてきましたね。


『墓の墓場』コッパ処理委員会によって、コッパ微塵にされ捨てられた墓の墓場が見つかった。ああ、無情。香川県の庵治町にて。


『屋根からとび出す?』これは歩道橋の上から撮ったんだけど、こんなところから子供がとび出すかねぇ?屋根から転がり落ちてくるのかしら?埼玉県の桶川にて。

『だるまを置かない』この神社で「だるま市」が開かれる時、だるま供養でみんながここに置きたがるという。季節はずれにこれだけ読むと不思議。埼玉県の川越にて。

 その頃の私は「トマソン」というテーマの中で活動していたんですが、だんだんそれだけでは物足りなさを感じるようになっていた。そんな頃に「東京建築探偵団」の藤森さんや、「マンホールのふた」の林さんと出会って、あらゆる路上のものへと観察の対象が広がっていったんですよ。それから間もなく、私と藤森さん、林さんのほかに、「建物のカケラ」の一木さんや、「ハリガミ考現学」の南さんなんかで京都の路上を観察するという雑誌の企画があって、そこでこの際、「路上観察学会」を作ろうという話になったんですよ。大げさに記者会見なんかもやって、みんなで正装して発足の宣言なんかを読んだりしました(笑)。それで発足当時から結構面白がられて、NHKにまで取り上げられましたね。そのうち自治体から「講演会をやってほしい」なんていう依頼も来て、「本当にいいんだろうか?」と思いましたよ(笑)。活動の中で撮った物件の写真展などをやっても、小さい会場に入り切れない人たちがカーテンの透き間から一所懸命覗いているような状況で、とにかく最初から盛り上がっていましたね。