撮影教室


 フィルターといいますと、クーラーや空気清浄機、車のファン部分など多くに使用されていますが、これらはそれぞれ目的の効果を得るために、不要なゴミや不純物を濾過する役目を果たしています。写真に使用するフィルターも[光]の中に含まれている撮影に不要な光を、カットしたりの同様な濾過効果を保持しています。種類によってコントロールする効果がそれぞれ異なっています。ポートレート向け、風景向け、人工光源向けなどなどその種類は豊富にあって、プロでも知らなかったり、使ったことのないフィルターは数限りなくある、と言っても過言ではないほどです。それだけに、フィルターワークをマスターすれば、一般的には撮影目的をより明確にできるし、特殊なフィルターの組み合わせでドキュメントタッチな写真や自分だけのオリジナルな撮影もできます。

 フィルターを選択する場合には、まず目的を明確に持つことが必要でしょう。この選択の理解を速めるためのキーワードと種別のポイントを知って下さい。

*露出倍数=フィルターを使用すると一部を除き、フィルムに当たる光の量が少なくなりますから、露光量を多くしなければならないケースが増えます。説明書に記載されていますから、使用前にはよく読んで必ずチェックして下さい。

*色温度=カラー撮影でしばしば使用されますが、ひとつの目安として昼間の光の温度が5500K(ケルビン)、写真電球では3200Kと覚えておいて下さい。フィルムでデイライト用とはその名の通り昼間の光、タングステン用は写真電球用で、ストロボは5500Kですからデイライト用になるわけです。

*紫外線=主に太陽から発しられています。人の目では識別できないものの、フィルムは識別してしまう、やっかいモノです。

*紫外線をカットするフィルター=スカイライト、UVフィルターと呼ばれていますが、レンズに装填していても撮影にほとんど影響がなく、紫外線をカットしてスッキリした写真が得られことで[常用フィルター]になっています。

*白黒用フィルター=白黒写真のコントラストを強調する場合によく使用されます。トーンを整える整色フィルターもあります。

*色彩をコントロールする(色温度変換)フィルター=カラー用としてはもっともポピュラーなのがLBタイプです。昼間の色温度が高い時に青みを落とすためや逆に朝夕の色温度が低い時に赤みをおさえるために使います。それぞれ段階的に強弱があります。但し、雰囲気を重要視する場合は使用しないのが通常です。

*色補正を行うフィルター=CCフィルターと呼ばれ、[色を変える]効果があります。色彩コントロールと同類に扱われますが、根本的には異なります。よく蛍光灯の色補正(左の写真 上:使用 下:未使用)に使われ、また例えば、緑色を強調する時には薄いグリーンのCCフィルターを使用します。

*光量を調節するフィルター=無彩色のフィルターで、明るさを減少させるために使用しますが、カラーバランスやコントラストは崩れません。NDフィルターと呼ばれています。低速シャッターや長時間露光が必要な時によく使用されます。以前は絞りのコントロールに使われていましたが、最近はカメラサイドで長時間露光ができることから、主に低速シャッターで川の流れを表現するなどに使われるケースが多い。無彩色ですからフィルターを重ねて使用することも可能です。
*光の乱反射を除くフィルター=PLフィルターと呼ばれ、写真にとって余計な反射や光の写り込みを取り除けることで常用化されつつあります。特に風景撮影では必携と語るカメラマンも多くいます。
 この偏光(PL)フィルターはある一定の角度のみ部分的に光をカットしますから、一眼レフでファインダーを見ながらフィルターを回転していくと、急に反射が消えクリアになる部分があります。ここでシャッターを押します。但し、ハーフミラー採用の一眼レフにはサーキュラータイプの偏光フィルターを使用しなければ、側光や側距離に狂いが生じることがあります。

左PL使用 紅葉も断然きれいです


特殊効果フィルター
 フィルターは本来、色温度、色補正、光量調節、偏光調節などが目的とされていましたが、最近では映像を想像するための[特殊効果フィルター]が多数販売されています。

*ソフト系フィルター=主にポートレートに使用にされ、全体をソフトに写し込むフィルターから、霧やもやがかかったような効果をもたらすフォギーフィルターがあり、それぞれ強弱があります。ソフト効果としてポートレートでは、顔のシワやニキビを目立ちにくくしたりします。また、フォギーはメルヘンチックな雰囲気を出すのに効果的で、風景にも使用されています。
 使用上の注意点としては、ピントを正確に合わせないとボケた写真になり、絞り過ぎるとフィルター表面の粒子が写るケースもあります。このほか中央のみ、半分のみ、周辺のみをソフトにするなどがあります。

*多重露光効果フィルター=ミラジュフィルターと呼ばれ、2〜6面プリズムで多重露光したようにひとつの被写体を多重に見せてくれます(左の写真)。中央にひとつの被写体を置き周辺にいくつかの像があったり、それぞれの像が均一に並んでいたりなどがあります。このフィルターにソフト効果を加えたモノも販売され、種類もますます豊富になっています。

*通常の光をシャープな光に変換するフイルター=フィルター表面に格子や網状を施し光の線を強調させます。強い点光源ほど効果が出ます。また絞り込むほど鋭い光が得られます。オートフォーカスではレンズが回転するため、ファインダーで覗いた光とは異なることがしばしば生じます。思い通りの光を得ようとする場合にはマニュアルで撮影します。

*光に虹色を演出するフィルター=レインボーフィルターと呼ばれ、ネオンサイン撮影では打ち上げ花火のようなイメージを持たせたり、幻想的な演出ができます。やはり絞りによって効果が異なります。

 以上のほかにも、半分だけ効果を出したり、被写体の縦横比に変化をもたらすフィルターもあって、フィルターワークで写真の世界が大きく拡がります。

(写真協力:ケンコー)

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