撮影教室


夜景撮影をマスターすれば、楽しさも腕もワンランクアップ

 夜景をカメラのAE(オート)機構まかせで撮影して「成功する時もあるが、失敗率が高い」あるいは「露出計どおりに撮影したのに露出アンダーで失敗した」の声は意外に多くあります。これは一般のカメラ、フィルムは、昼間撮ることを前提にして作られており、夜間では、撮影者が若干の工夫を要することになります。とはいっても、撮影はそんなに難しいものではありません。

 失敗の大きな要因としては

 1.昼間の光が平均的であるのに対して、夜間は明暗差が大きいことで、特に撮影範囲内に強い光があると、その光にオート機構が引っ張られて、全体にアンダーの写真となり、目で見た夜景と大きく異なってしまいます。この失敗例が一番多いようです。

 2.弱い光で撮影する時、露出計で測定して適正なスローシャッターを切っても、フィルムの感度が鈍り計算どおりの露出が与えられず、アンダーになる現象が起きたり、カラーバランスが崩れることもあります。これは「相反則不軌」と呼ばれています。このため、この相反則不軌を考えて、カメラや露出計で計算された露出値より長い露出を与えなくてはなりません。
 このカメラ、フィルムの両面の問題点がだいたい夜間撮影を難しくしている理由です。

 この2つの問題点はいずれもアンダーになる傾向にあることから、露出計やカメラのオート機構よりオーバーにすれば、失敗はかなり解消されることになります。
 では、どの程度オーバーにしたら良いのか、夜景の光によって異なりますから判断に苦しむところです。また、必ずしも相反則不軌現象が生じるとは限りませんから、結局、何段階かの露出補正が必要になってきます。もっとも安全な方法としては、AEそのままで撮影し、その後、プラス側に1EVごと3段階補正することをお勧めします。これでよほど特殊な条件がない限り、この3段階の内の1シーンに適正露光が入るはずです。
 オーバー側への3段階補正のやり方は、AEで絞りf8、シャッタースピード16秒が適正とするなら、絞り値はそのままでシャッタースピードを32秒と64秒で撮影します。逆にシャッタースピードを16秒のままで、f値を8から 5.6、4に変化させればいいわけです。
 カメラによって事情はやや異なりますが、分割測光があるなら、中央重点測光より失敗の確率は低くなる傾向にあります。

 夜景の露出値は微妙な光の事情によって異なりますが、一つの目安として、満月の光だけで(月は画面に入れないで)景色を撮る場合、ISO 100のカラーフィルムで、f5.6 で5〜10分が必要とされています。また、車のテールランプの軌跡を撮るにはf8で10〜20秒程度、長い軌跡の場合はf11で30〜40秒ほどです。これはあくまでも目安であることを頭にとどめておいて下さい。
 また、忘れてならないのが三脚です。スローシャッターでの撮影になるため、露出が合っていても何が写っているのか判断できない写真も時々見かけます。夜景撮影ではほとんどの場合、三脚を使用するのが原則です。
注)参考までに相反則不軌現象は長時間露光だけでなく、1/1000秒以上の高速シャッタースピードでも生じることがあります。

写真提供=島田 康雄(ロンドン リージェントSt)

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